表示品質とメッシュの設定

Inspireインプリシットモデリングででの作業時に、表示品質とメッシュの設定を使用して計算時間、外観、インプリシットおよびメッシュ形状の形状精度を管理する方法について説明します。これには、インプリシットモデリングでの作業、インプリシットモデリングでの他の形状の変換、エクスポートや他の後工程でのインプリシット形状のメッシュ化が含まれます。

表示品質の概要

インプリシットモデリングでは、ほとんどの形状は陰関数から作成されます。陰関数は理論的には解析関数であるため、形状を完全に記述することができます。しかし、この「完璧な」形状はレンダリングされる必要があり、また三角形メッシュ(.stlなど)のような完全に正確な定義を持たない他の形状と組み合わせなければなりません。このような理由から、すべてのインプリシット形状は、デジタル画像のピクセルに類似した点の3Dグリッド上にサンプリングされます。3Dでは、これらピクセルを「ボクセル」と呼びます。デジタル画像の解像度と同じように、インプリシットモデリングにも解像度の概念があります。この解像度は、下の画像の左上にある表示品質ドロップダウンで制御できます。最初の画像は、「非常に低い」設定で計算・可視化されたラティス構造を示しています。シャープなエッジが丸みを帯び、ストラットの直径が指定値と異なっていることがわかります。

次の画像を見ると、完全ではありませんが、シャープエッジはよりシャープになり、ストラットの直径は指定値に非常に近くなっています。可視化の設定を使用して、計算時間(GPUメモリなどハードウェアに依存)と希望する表示品質および形状精度のトレードオフのバランスをとる必要があります。

表示品質管理に関するアドバイス

その時々の状況に合わせて表示品質を変更することは、良い習慣です。たとえば、インプリシットモデリングで変換を使用するような計算負荷の高い操作は、まず表示品質を低くして実行し、操作が正しく実行されていることを確認したら品質を上げるとよいでしょう。逆に、エクスポートやレンダリング用にモデルを作成する場合は、お使いのコンピュータで実行可能な最高の表示品質を使用することをお勧めします。

もう1つの考慮点は、インプリシットパートの各ボディは独自のボクセルグリッドを持つことです。下の画像では、手前に円柱体、奥に立方体があります。どちらの形状もシャープな特徴で正確にキャプチャーされていることに注意してください。

この2つのオブジェクトをブーリアン和で結合すると、1つのエンティティとして扱われます。つまり、それぞれが同じボクセルグリッドにキャプチャーされます。多くのボクセルが2つのオブジェクトの間の空きスペースのモデリングに使用されるため、各形状をモデリングするためのボクセルは少なくなります。下の画像では、幾何学的精度が明らかに低下しているのがわかります。以前はシャープだったエッジが丸みを帯びています。表示品質が両方の画像で同じであるにもかかわらず、このようになります。物理的に大きく離れたオブジェクトを合成するときは、この点に注意する必要があります。

最後のアドバイスは、ボクセルグリッド内の形状の配置を考慮することです。どのような場合でも、ボクセルグリッドはグローバルなx、y、z方向に整列されます。これを軸合わせグリッドと呼びます。また、グリッド内のボクセルは常に立方体要素です。曲率を持つフィーチャーは、ボクセルをどのように切るかによって、正確にはキャプチャされたりされなかったりします。例として、ピクセルを使ったデジタル画像で2Dの直線を表現することを想像してみてください。その直線が画像内で水平または垂直であれば、表現はシャープで正確です。しかし、その直線が画像内で斜めになっている場合、異なる行や列のピクセルを通過する際に、直線に沿って階段のような効果が現れることが予想されます。

これはボクセルを使った3Dでも同じです。この効果を説明するにあたって、インプリシットモデリングで非常に細長い円柱を作成しました。下の画像は、このような円柱をグローバルZ方向に整列させたものです。まず注目すべき点は、円柱の上部(同様に下部)にあるシャープな円形のエッジが丸みを帯びていることです。これはボクセルサイズの計算方法の結果です。まず、オブジェクトの軸に沿った境界ボックスが計算されます。最も長い寸法、この場合はz方向が、ボクセルサイズの設定に使用されます。表示品質ドロップダウンで非常に高いを設定すると、境界ボックスの最長寸法が512等分され、ボクセルサイズが設定されます。このボクセルサイズは他の2方向でも使用され、円形フェイス全体のボクセル数は明らかに少なくなります。そのため、円柱の断面と比較して、円柱の長さに沿って詳細をキャプチャするボクセルが多くなります。したがって、円形プロファイルの精度はわずかに低下します。

軸合わせされた境界ボックスのボディ対角線(たとえば、左下手前から右上奥まで)に沿って円柱を揃えると、さらに精度が落ちます。下の画像では、前述の階段効果により、円柱の特徴が離散ボクセルグリッドとうまく整列しないため、精度がさらに低下しているのがわかります。これはこの方法でモデリングする際の固有の特性ですが、この効果を意識することで、その影響を効果的に最小限に抑えることができます。

インプリシットモデルから三角メッシュへの変換

インプリシット形状を三角メッシュに変換する理由はたくさんあります。一般的な例をいくつか挙げます。
  • 積層造形マシン(3Dプリンター)のビルド準備を行うソフトウェアが三角メッシュ形式を受け入れる、または対応する場合。
  • シャープなエッジなど、保存する必要がある重要な形状があり、インプリシット形状も設計に組み込みたい場合。そのため、結合操作の前にすべてをトライアングルメッシュ形式に変換します。
  • 解析(構造シミュレーションなど)に使用するモデルを作成中で、シミュレーション・パイプラインがインプリシットモデリング形状を解釈できない場合。
  • インプリシットモデルを入力として受け付けない形状編集ツール(ポリメッシュのスカルプトなど)を使用する場合。
  • Inspireインプリシットモデリングにアクセスできない同僚や顧客に設計を送信したい場合。

以下のステップでは、インプリシットメッシングオプションを用途に合わせて最大限に活用しながら、インプリシットパートを△メッシュに変換するプロセスを説明します。

  1. 緑色のチェックマークをクリックして、インプリシットパートの編集を完了します

  2. 「ビュー」タブのオプションをチェックして、「プロパティエディター」ウィンドウが表示されていることを確認します。
  3. モデルブラウザで選択するか、シーンでモデルをクリックして、三角メッシュに変換したいインプリシットパートを選択します。
  4. プロパティエディターウィンドウのプロパティの一番下までスクロールして、インプリシットメッシングプロパティを見つけます。

  5. メッシュの保存先を選択します。シミュレーションを行う場合は解析オプションを選択します。印刷またはファイル保存用にエクスポートする場合は、印刷を選択します。
  6. 品質設定を2つのオプションから選択します。標準またはカスタム
  7. 変換したいモデル(モデルブラウザ内またはシーン内のモデル上で直接)を右クリックし、三角メッシュに変換を選択します。

インプリシットメッシングプロパティの選択ガイド

まず、変換時に生成されるメッシュの品質は、インプリシットモデリング時に使用された表示品質設定に直接関係することに注意してください。非常に高い設定を使用した場合、三角形メッシュは下の画像のように非常に細かくなります。徐々に低い表示品質設定を使用すると、メッシュは粗くなっていきます。

メッシュの目的が解析でない場合は、可能であれば三角形の数を減らすことをお勧めします。そのためには、カスタム品質設定を選択し、デシメーションチェックボックスがオンになっていることを確認します。変換中、三角形メッシュは可能な限り小さな三角形を大きな三角形に統合します。これは通常、大きく平らな広がりに見られます。デフォルトのデシメーション削減設定とデシメーションエラー設定を使用した結果を以下に示します。

デフォルト設定によるデシメーションが強すぎる場合は、デシメーション削減プロパティを減らすことができます。デシメーション削減プロパティには、0から1の間の数値を指定します。削減率を0.9ににすると、メッシュ内の三角形の総数を(元のメッシュと比較して)90%削減することを求めるのと同じです。逆に、0.4は40%の削減を求めるのと同じです。上記の画像は0.75、下記の画像は0.4を使用しています。下の画像の方がより多くの三角形があり、メッシュが元の細かいメッシュにより近似していることがわかります。

デシメーションエラープロパティは、境界ボックスのサイズに対するパーセンテージで指定する値です。これは、元のファインメッシュと新しくデシメーションされたメッシュの間の許容偏差を指定します。このプロパティを小さい値に設定すると、元のファインメッシュの形状をより正確に再現するメッシュが生成されます。限界ケースとして、この値をゼロに設定することができます。これは通常、領域が平面の場合にのみ三角形がマージされ、精度の損失がないことを意味します。この場合の影響を以下に示します。

解析用メッシュ

メッシュの使用目的が構造シミュレーションのような解析の場合、元のファインメッシュもデシメーションされたメッシュも適切ではありません。ファインメッシュはほぼ間違いなく細かすぎるため、解析パイプラインの速度を不必要に低下させます。逆に、デシメーションされたメッシュは一般的に三角形が大きすぎて、単一の三角形で広い範囲を覆ってしまいます。

解析に適したメッシュは、正三角形に近い三角形を含むメッシュです。大きな三角形がいくつかあるのではなく、大きな平面上に小さな三角形がたくさんあるのが良いとされます。また、三角形は曲率の高いところでは小さく、平らなところではやや大きくなります。解析に理想的なメッシュを作るための厳密なガイドラインはなく、ユーザーの裁量に任されています。ただし、平面領域での三角形の大きさと、シャープなエッジ付近での三角形の小ささを明確に強調した例を以下に示します。