応答スペクトル解析
地震や爆風などの過渡事象に代表される動的荷重を受ける構造物の最大応答を予測するために利用される構造解析手法です。
応答スペクトル解析(RSA)は、このような条件下で構造物が受ける最大変位、応力、力の推定を行います。RSAは、特定の動的荷重に対するあらかじめ定義された応答スペクトルと、通常のモーダル解析の結果を組み合わせたものです。時系列解析とは異なり、RSAは応答の時間発展を生成しません。
応答スペクトルは、指定された動的荷重下での1自由度(1-DOF)系の固有振動数に対する最大応答を示します。これらのスペクトルは、各構造モードに対する最大モード応答の計算を容易にします。絶対値和法(ABS)、二乗和平方根(SRSS)、Naval Research Laboratory (NRL)、完全二次結合(CQC)などの様々な合成法は、構造応答のピークを推定するためにこれらのモード最大値を統合します。
従来の過渡解析手法と比較して、RSAはピーク応答を近似するための、よりシンプルで計算効率の高い手段を提供します。計算に必要なのは、入力加振とその結果の応答の全周波数範囲を正確に表現するのに十分な数の固有値を取得することです。通常、設計仕様書には応答スペクトルが記載されており、さまざまな動的加振下でのピーク応答を素早く計算することができます。その結果、RSAは、特に建築物の耐震解析において、一般的な設計ツールとして役立っています。
構造物にRSAを適用する場合、正確な結果を得るためには、適切なモード結合法を選択することが重要です。この方法は、個々の振動モード(モード応答)から得られた生の結果を、ソフトウェアが各自由度の変位、反力、内力、およびその他のパラメータの1つの値に統合する方法を決定します。これらの組み合わせ結果は、構造設計の基礎となるものであり、モーダル組み合わせ法を慎重に選択することの重要性を強調しています。次のセクションでは、RSAで一般的に使用されているいくつかのモードの組み合わせ方法について説明します。
モード結合
絶対値和法(ABS)
絶対値和法のモード結合は、各振動モードの結果(変位や内力など)の絶対値を計算し、その絶対値を合計します。この方法は、すべてのピークモード応答が同時に発生すると仮定しているため、保守的な推定となります。そのため、構造設計の用途ではあまり好まれません。
絶対値和法による全応答のピーク値の計算式は以下の通り:
- 各振動モードの1自由度における非定常応答を表します。
- 固有ベクトル
- モーダル寄与率
- 入力応答スペクトル
二乗和平方根(SRSS)
SRSSモード結合法は、各振動モードの結果の2乗和の平方根を計算し、全応答のピークを近似します。この方法は、固有振動数が異なる構造に対して特に効果的です。しかし、構造物の固有振動数の間隔が狭い場合、SRSSは正確な結果をもたらさない可能性があり、避けるべきです。
SRSS法による全応答のピーク値は、次のように表すことができます:
- 各振動モードの1自由度における非定常応答を表します。
- 固有ベクトル
- モーダル寄与率
- 入力応答スペクトル
完全二次結合(CQC)
CQC法は、固有振動数の間隔が狭い構造物のモードの応答を合成する際のSRSS法における制限に対処しています。CQC法による全応答のピーク値はの計算式は以下の通り::
- i,j振動モードそれぞれのモード応答のピーク値
- 各加算ステップで合成される2つのモードのモード相関係数
- i および j モードの固有振動数の比 ( )
- および
- 2つのモードのモード減衰値
Naval research laboratory(NRL法)
NRL法のモード結合法は、二乗和平方根法(SRSS法)と絶対和法(ABS法)の両方の側面を統合し、応答スペクトル解析においてバランスの取れたアプローチを実現します。ABS法による最大ピークモード応答を、SRSS法により評価された固有振動数を持つ応答が計算された構造への残りのモード寄与に加算します。
NRL法によるモード結合の定式化は以下の通りです: