電磁界解析

理論

散乱パラメータ(Sパラメータ)は、電磁気学および高周波 / マイクロ波工学における基本概念であり、高周波ネットワーク内での電磁波の挙動を記述するために使用されます。これらは、系の異なるポートにおける入射(入力)電力波と反射 / 透過(出力)電力波の関係を定量的に表します。
  • マイクロ波周波数では、電圧や電流を直接測定することが困難なため、高周波回路の特性評価にSパラメータは不可欠です。
  • これらはベクトルネットワークアナライザー(VNA)を使用して測定されます。
  • 全てのSパラメータは複素数で、大きさと位相の両方を持ちます。

2ポートのネットワークの場合、4つのSパラメータが存在し、次のように反射(b)波と入射(a)波の関係を表す行列式で表されます。

b 1 b 2 = S 11 S 12 S 21 S 22 a 1 a 2

ここで、

a1a2
それぞれポート1とポート2の入射波
b1b2
それぞれポート1とポート2の反射(散乱)波
1.
Sパラメータ 意味 説明
S11 入力反射係数 入力がポート1に与えられた場合のポート1における反射波
S21 順方向伝送 入力がポート1に与えられた場合のポート2における透過波
S12 逆方向伝送 入力がポート2に与えられた場合のポート1における透過波
S22 出力反射係数 入力がポート2に与えられた場合のポート2における反射波

完全電気導体(PEC)は、無限の電気伝導率(σ→∞)で定義された理論上の材料です。理論上、電流の流れに対する抵抗はゼロです。

PECの主要な特性と境界条件:
  • 内部電場はゼロ( E i n s i d e = 0 ):電荷は瞬時に再配置され、内部電場を打ち消します。
  • 表面電流は抵抗なしで流れる:電流はPECの表面のみを流れます。
  • 表面における接線電場はゼロ:これは、マクスウェル方程式を解くための重要な境界条件です。
  • 表面における磁場の法線成分はゼロ:時間変化する磁場は、表面電流を誘導し、導体への磁束を打ち消します。
  • 入射電磁波を全て反射:電磁波に対して完全な鏡として機能し、透過や吸収はありません。

矩形導波管は中空の金属製パイプで、計算を簡素化するため、しばしばPEC壁でモデル化されます。

主要な考え方:

PEC境界では、壁面での接線電場がゼロに強制されます。これにより、導波管内部にモードと呼ばれる離散的な電磁界パターンが生成されます。

支配的なTE10モード(横電場、m=1、n=0)は伝播可能な最低周波数モードです。
  • 電場はPEC側壁(x=0やx=aの位置など)でゼロになります。
  • このモードが基本(第1)モードと見なされます。
  • 寸法がa>bの矩形導波管の場合、TEmnモードのカットオフ周波数(fc)は次の式で与えられます:
    f c = 1 2 π με m π a 2 + n π b 2
最低のカットオフ周波数は、m=1、n=0(すなわちTE10)で発生します。

材料特性

比誘電率( r は、真空の誘電率( 0 )に対する材料の誘電率( )の比率です。これは、材料が単位電圧あたりどれだけの電場を蓄えることができるかを真空と比較して示したものです。
  • r が大きいほど、その媒体内での波の速度は遅くなり、波長は短くなります。
電気伝導率( δ は、その材料でどれだけ電流が流れやすいかを示す尺度です。単位はジーメンス毎メートル(S/m)です。
2.
領域 δ = 0(完全絶縁体) δ = ∞(完全導体 / PEC)
導波管充填材(内部) ✔ 導体損失なし(理想誘電体)

✔ 物理的には意味をなさない

完全導体で充填すると全ての電磁波が遮断される

✔ 電磁波は自由に伝播できる
✖ エネルギー散逸なし
導波管壁 ✖ 波を閉じ込められない ✖ 導波には理想的なケース
✖ 波が漏れる、あるいは導波されない ✖ オーム損失なし
✖ 電磁場の適切な反射なし ✖ 電磁場の全反射
✔ ほとんどの電磁シミュレーションで使用される(PEC)
誘電正接( tan δ は、電場からのエネルギーがどれだけ材料内で熱として散逸するかを表します。
  • 値が大きいほど損失が大きくなります。
3.
領域 tan δ =0(無損失誘電体) tan δ →∞(非常に損失の大きい材料)
導波管充填材(内部) ✔ 理想的なケース ✖ 非常に損失が大きい
✔ 波は誘電損失なしで伝播する ✖ 波は著しく減衰する
✔ 空気、真空、PTFEに使用される ✖ 吸収体や損失性コーティングにのみ使用される
導波管壁 ✖ 適用不可 — 導波管壁は金属またはPECであり、誘電体ではない ✖ 適用不可 — 壁は誘電正接でモデル化されない
比透磁率( μ r は、真空の透磁率( μ 0 )に対する材料の透磁率( μ )の比率です。これは、材料が内部の磁場形成をどれだけ支持するかを示します。
  • 非磁性材料(空気、ほとんどの誘電体など)の場合、 μ r =1
  • μ r は、この材料が磁束を集中させることを意味します。
磁気損失正接( tan δ μ は、材料における磁気損失を表します。これは、 δ μ = μ " μ ' として定義され、ここで μ ' は透磁率の実部(エネルギーの蓄積)、 μ " は虚部(エネルギーの損失)を表します。
4.
領域 tan δ μ =0(無損失磁性体) tan δ μ →∞(非常に磁気損失が大きい)
導波管充填材(内部) ✔ 磁気損失なし ✖ 強い減衰
✔ μ′>1の場合、波の伝播は理想的 ✖ 電磁エネルギーは磁気損失として吸収される
✔ 低損失フェライトに使用される ✔ 磁気吸収体で使用される
導波管壁 ✖ 適用不可 — 導波管壁は金属であり、磁性材料ではない ✖ 適用不可 — 金属は磁気損失正接を使用しない

電磁界 - モーダル理論

電磁界 - モーダル理論とは、導波管、共振器、容器など、特定の構造内に存在し得る自然な電磁波の挙動、すなわちモードの解析にかかわる理論です。これは基本的に、機械系で固有振動数やモード形状を求めるために使用されるモーダル解析に相当する電磁気学的な理論です。

この理論は、定義された構造内の複雑な電磁場を、これらの特性モードの重ね合わせに分解できるという考え方を中心としています。モードとは、系のマクスウェル方程式境界条件を満たす、電場(E)と磁場(H)の特定の空間分布です。

導波管と共振器
導波管のような構造において、モードは電磁波が(理想的には)損失なく伝播(または定在)できる特定の方法を定義します。共振器の場合、モードは固有振動数または共振周波数に対応します。
準固有振動モード(QNM)
損失を伴う系(開放構造や吸収剤の構造など)では、このモードは準固有振動モードと呼ばれることがあります。これらは複素固有振動数を持ち、その実部は共振周波数に対応し、虚部はエネルギーの漏れや吸収による有限の寿命(減衰率)に対応します。

用途

導波管解析
特定の周波数で伝播できる特性モード(TEモード、TMモード、TEMモードなど)、およびそれらに関連する伝播定数の決定。
共振器の設計
光共振器やマイクロ波共振器のような構造の共振挙動の把握。これは、量子光学やマイクロ波工学といった分野において極めて重要です。
電磁両立性(EMC)
モード変換(複雑な回路において生じる、コモンモードノイズや差動モードノイズなど、異なるノイズモード間の望ましくない変換)の解析。これによりエンジニアはより優れたEMIフィルターを設計できます。

電磁界 - モーダル解析

電磁界 - モーダル解析では、モデルの空洞内における電磁場の周波数と各周波数に対応するモードを評価します。

最初に発生する固有振動数は、空洞の基本周波数ともいいます。モードは昇順で一覧表示されるため、最初のモードが基本周波数です。

モード数の値は、調査するモードの合計数を示しています。

減衰振動の場合、出力には固有値と減衰係数、および周波数が含まれます。固有値の実部は減衰率(単位は[1/秒])を表し、虚部は角周波数(単位は[rad/秒])を表します。