線形静解析
静荷重がかかっている構造について解析すべき、基本的な有限要素方程式は、次のように表わせます:
ここで、 は構造の剛性マトリックス(個々の要素の剛性マトリックスの集合)です。ベクトル は変位ベクトルであり、 は構造にかかっている荷重のベクトルです。上記の方程式は、外力と内力が釣り合っていることを意味します。
変位境界条件を適用してモデルの剛体自由度を固定しない限り、剛性マトリックスは特異マトリックスになります。
釣り合い方程式は直接または反復ソルバーで解かれます。デフォルトでは直接ソルバーが起動されます。ここで未知変位は同時に、計算効率の面から、剛性マトリックス のスパース性と対称性を利用したGaussの消去法で解かれます。それとは別に、前処理付共役勾配法を使用した反復ソルバーを用いることもできます。直接ソルバーは非常にロバストで、高精度で効率的ですが、厚肉のソリッド構造では場合により反復ソルバーが速度の点で優れます。反復ソルバーはSOLVTYPサブケース情報入力を通して選択でき、SOLVTYPバルクデータエントリを参照します。
要素の節点における未知の変位が算出できれば、材料の構成関係を利用して応力を計算できます。変形が弾性範囲に収まっており、すなわち応力 がひずみ の線形関数だと仮定されている線形静解析では、応力の計算にHookeの法則を使用できます。Hookeの法則は、 と表すことができ、これには材料の弾性マトリックス を使用します。ひずみ は変位の関数です。
静荷重と境界条件は、入力デックのバルクデータセクションで定義します。これらをサブケース情報セクション内で参照する必要があり、これにはSUBCASEでSPCおよびLOADステートメントを使用します。各SUBCASEは、1つの荷重ベクトルを定義します。熱荷重は、 SUBCASEにTEMPERATUREステートメントを有するバルクデータエントリを参照することによって定義されます。
拘束されていないモデルは、慣性リリーフを使って解析することができます。 SUPORT1 サブケース情報エントリは剛体の運動を抑制する境界条件を参照します。自由度を最大6つ拘束できます。SUPORTバルクデータエントリまたはPARAM,INREL,-2を使用すると、サブケース参照を使用せずに拘束を定義することが可能です。