複素固有値解析
実固有値解析は構造ノーマルモードの計算に用いられます。複素固有値解析では構造の複素モードが計算されます。
複素モードは虚部を含んでおり、それは振動の周波数を、その実部はモードの減衰を表しています。
実部が負の場合、そのモードは安定していると言えます。実部が正の場合、そのモードは不安定となります。複素固有値解析は通常、特別な物理挙動のために非対称行列で表される構造の安定性を評価するために用いられます。これはまた、減衰のある構造のモードを測定するためにも用いられます。
複素固有値解析は次のように定式化されます:
- 構造の剛性マトリックス
- 質量マトリックス
- 要素の構造減衰マトリックス
- 粘性減衰マトリックス
- 全体構造減衰係数
- マトリックスの直接入力により定義される追加の剛性マトリックス
- 追加の剛性マトリックスの係数
複素固有値問題の解では、複素固有値 、およびおよび複素モード形状 複素モードの正の実部は不安定モードと考えられます。不安定モードはしばしば対で生成されます。
その円振動数 は と同じです:
ここで は固有周波数。


減衰係数も次の式から計算されます:
これは複素固有値の実部に対応し、負の減衰係数のモードは正の実部を持ち、そして不安定モードとなります。
直接法による複素固有値解析
複素モードの抽出は、上記の定式化から直接行うことができます。これには計算コストがかかることに注意が必要です。
直接法による複素固有値解析を実行するには、EIGCバルクデータエントリを指定する必要があります。これは、抽出する複素モード数を、このエントリで定義しているためです。EIGCカードはSUBCASE定義のCMETHOD文で参照されます。
モーダル複素固有値解析
上記の定式化からの直接の複素モードの取り出しは通常、モデルサイズが小さくない場合は特に、計算コストが非常に高価となります。代わりにモーダル法が複素固有値問題を解くのに用いられます。最初に、実モードがノーマルモード解析を通して計算されます。次に、複素固有値問題が実モードに張られた部分空間に投影されて形成されます、そして、これは実空間に比べてずっと小さくなります。最後に、広く知られているHessenberg縮退法に基づいて縮退された問題の複素モードの取り出しが行われます。
モーダル複素固有値解析の実行のためには、EIGRLとEIGCのバルクデータエントリを両方与える必要があります。これによって、それぞれ取り出される実モードの数と複素モードの数を定義します。EIGRLカードはSUBCASE定義のMETHOD文で参照される必要があります。EIGCカードはSUBCASE定義のCMETHOD文で参照されます。
出力
複素固有値と周波数は、直接法複素固有値解析とモーダル複素固有値解析の両方について、.outファイルに出力されます。ローターダイナミクスを含む複素固有値解析の場合、固有値の大きさに基づいて.outファイル内のモードのソートとリストが行なわれます。ローターダイナミクスを含まない複素固有値解析の実行では、ソートは固有値の虚数部に基づいて行われます。
音響(流体-構造連成)複素固有値解析の追加出力は、.cmode.csvファイルファイルにエクスポートすることもできます。詳細については、PARAM, FCACSVバルクデータカードをご参照ください。
用途
複素固有値解析は通常、物理的不安定性の元(摩擦など)を表す非対称行列を含みます。複素固有値解析では現時点で次の適用例が用意されています:
この不安定性を捕捉するには、非線形静的解析(微小変位)サブケースがセットアップされ、モデルの状態がSTATSUB(BRAKE)の使用によりモーダル複素固有値解析サブケースに引き継がれる必要があります。STATSUB(BRAKE)が存在する場合、OptiStructは参照されるNLSTATの最後でモデルの状態(応力、幾何剛性、摩擦など)に関連した各種パラメータを伝達します。このワークフローは、ブレーキ鳴き解析の適用例において典型的です。
一部のケースでは、STATSUB(BRAKE)を使用する代わりに、モーダル複素固有値解析を実施する前に外部マトリックスをインポートして摩擦状態を表すという選択肢もあります。その外部マトリックスはDMIGバルクデータ入力で与えられ、SUBCASE定義のK2PP文から参照する必要があります。外部マトリックスについて、PARAM, FRICによって特定の係数を定義することが可能です。そうでない場合、係数のデフォルト値は1.0です。
複素固有値解析は、ローターダイナミクスを介した回転システムのジャイロスコープ効果のモデル化にも活用できます。