線形過渡応答解析
時間依存の荷重に関する構造の応答を計算できます。典型的な応用例としては、地震、風、爆発を受ける構造物、または窪みを通過する車輌が挙げられます。
荷重は時間依存の力および変位です。初期条件は、節点の初期変位と初期速度を定義します。
過渡応答解析の結果は、変位、速度、加速度、力、応力、およびひずみが計算されます。応答は通常、時間依存です。
過渡応答解析は、マトリックスの形で初期条件を含む下記の運動方程式を解くことによって、構造の応答を計算します。
マトリックス は全体剛性マトリックス、マトリックス は質量マトリックスを表わし、マトリックス は減衰要素を基に作成された減衰マトリックスです。初期条件は問題の定式の一部で、直接法による過渡応答解析にのみ適用されます。運動方程式は、ニューマークのβ法を使用して、時間に関する積分が行われます。タイムステップと終了時間を定義する必要があります。
過渡解析のための荷重は、TLOADiエントリを介して適用することができます。TLOADiエントリのEXCITEIDフィールドは、力、強制変位、強制速度、強制加速度、強制温度、強制ジュール損失密度、および .rsp/.rpcファイルを介した外部読み込みなど、適用可能な荷重のタイプを特定します。
直接法およびモーダル法による過渡応答解析の方法は、次のように実装されます。
直接法による線形過渡応答解析
運動方程式は、ニューマークのβ法を使用して直接解析されます。
減衰についての複素係数の使用は、過渡応答解析では利用できません。したがって、構造減衰は、同等の粘性減衰を使って含めることができます。
減衰マトリックス は下記のとおり、いくつかの寄与で構成されます:
- 粘性ダンパ要素のマトリックスと、DMIG バルクデータエントリで入力された外部減衰マトリックス。
- 全体的な構造減衰(PARAM, G)。
- 全体的な構造減衰を等価粘性減衰に変換する対象周波数(PARAM, W3) 。
- 要素の構造減衰を等価粘性減衰に変換する際の対象周波数(PARAM, W4)。
- 構造要素の減衰係数 による寄与 。
- 従来の手法(デフォルト – TMTDは空白)
- Newmark-Beta法(TMTD = 1)
Newmark-Beta時間積分スキームは、従来の手法の代替として直接法による線形過渡解析に利用できます。直接法による線形過渡解析ではこの手法は、TSTEPバルクデータエントリのTMTDフィールドを1に設定することでアクティブにできます。
- 、 、および
- それぞれ、質量、粘性減衰、剛性マトリックス。
- 全荷重。
- および
- TSTEPバルクデータエントリのTC2およびTC3フィールドで変更可能。
- タイムステップ。
自動タイムステップ
線形過渡解析は、Newmark-Beta時間積分スキームの局所打ち切り誤差(LTE)に基づい基づいて自動タイムステップを提供します。これは、TSTEPバルクデータエントリのMREFフィールドで制御できます。
テーラー展開により、時間 から の変位 のLTEは次のようになります:
加速度を使用すると、 は次のように近似できます:
連成マルチDOFシステムの場合、上記の絶対値は、 の特定のノルムに置き換えられます。ここでは、次のようになるように、質量加重ノルムが使用されます:
前の方程式での誤差推定には、正規化が必要となります。これは、それが初期変位やカットオフ周波数などの特定の参照変位に依存するためです。正規化された誤差推定は、次のようになります:
ここで、 は、単位初期変位と約10サイクル / 秒における振動またはカットオフ周波数 ( は、シングルDOFシステムの固有振動数)がある線形非減衰シングルDOFオシレーターの時間平均LTEです。
ここで、 は、それ以前のすべてのタイムステップに跨る変位ノルムの最大値。
ここで、 はタイムステップにおける変位、 。
ノルムは次のように定義されます:
- > TOLの場合:現在のステップを拒絶し、現在のステップの半分にカットバックして再実行します。
- TOL > > 0.5 * TOLの場合:現在のステップを受け入れ、次のタイムステップを現在のステップの半分にカットバックします。
- 0.5 * TOL > > 1/16 * TOLの場合:変更はありません。
- 1/16 * TOL > の場合:次のタイムステップを現在のステップの1.25倍に拡大します。
TSTEPエントリのMREF継続行を使用して、タイムステップ が現在のステップのLTEに従って調整されるように自動タイムステップを制御できます。前述のように、トレランス(TOL)と比較して誤差が“大きい”場合、 は半分に減らされ、現在のステップが再計算されます。各ステップ内のそのような演算の最大数は、TN1フィールドによって制御されます。一方で、 がトレランス(TOL)と比較して“小さい”場合、 を増やすよう要求されますが、 が実際に増やされるのは、そのような要求のあるTN2連続ステップの後のみです。
線形過渡応答解析の実行
荷重および境界条件は、入力デックのバルクデータエントリセクションで定義します。これらをサブケース情報セクション内で参照する必要があり、これにはSUBCASEでSPCステートメントおよびDLOADステートメントを使用します。機械荷重と同様に、温度荷重(TEMP/TEMPD/TEMPADD)は、DLOADサブケース情報エントリに参照されるTLOAD1/TLOAD2バルクデータエントリーを介して線形過渡応答解析に適用することができます。
慣性リリーフは、線形過渡応答解析ではサポートされていません。OptiStructは、これを試みるとエラーを出します。
1つの過渡サブケースのみが定義できます。初期条件は、ICサブケースステートメントを介して参照する必要があります。解析のタイムステップおよび終了時間はTSTEP(TIME)サブケース参照で定義します。対応する時間積分スキームは、TSTEPエントリのTMTDフィールドで選択できます。自動タイムステッピングは、TSTEPエントリのMREFフィールドで制御します。MREF= 0は自動タイムステッピングをオフにし、MREF=1は自動タイムステッピングを有効にします。
さまざまな減衰要素と材料減衰のほか、一定の構造減衰 を適用することもできます。これにはPARAM,Gを使用します。
モーダル法による線形過渡応答解析
モーダル法では、まずノーマルモード解析を実行し、固有値 およびこれに対応するシステムの固有ベクトル を取得します。
状態ベクトル は、固有ベクトル とモーダル応答 のスカラー積として表すことができます。
次に、固有ベクトルを使用して、減衰のない運動方程式をモーダル座標に変換します:
モード質量マトリックス とモード剛性マトリックス は、対角マトリックスです。これによってシステム方程式は、 の各コンポーネントについての一連の非連成の方程式に単純化されるので、容易に解析できます。
減衰を考慮した結果は次のようになります:
このマトリックス は一般には対角マトリックスとはなりません。この結果、連成問題は、直接法によって解析されるシステムと似たものになりますが、自由度ははるかに小さくなります。単純化された運動方程式の解は、ニューマーク法を使って求められます。
非連成方程式は:
または
- モード減衰比
- モード固有値
- 構造減衰
- 臨界減衰
- 品質係数
これらは、次の3つの式で関連付けられます:
剰余ベクトル生成(精度の向上)
モーダル法の精度は、固有ベクトル のマトリックスへの動的荷重に基づいて静解析の変位ベクトルを追加することによって著しく向上します。これらのベクトルは剰余ベクトルと呼ばれ、この方法はモーダル加速度と呼ばれます。
- unit load methodは、動的荷重の自由度における単位ベクトルである静的荷重に基づき、剰余ベクトルを生成します。すなわち、剰余ベクトル生成のための静的荷重は、動的荷重が適用される自由度における単位ベクトルです。剰余ベクトルの数は、適用された自由度の数と等しくなります。
- applied load methodは、周波数ゼロにおける動的荷重を使用して、最大2つの剰余ベクトルを生成します。動的荷重の実数部分と虚数部分が同じである場合、またはそれらのいずれかがゼロである場合、どちらか一方のみが使用されます。一般的に、この方法がより効率的であることから、これがデフォルトの方法となっています。
変位加振の場合、剰余ベクトルは、動的変位加振の自由度と等しい自由度に単位変位をかける静的荷重ケースを解くことによって得られます。
モーダル法による線形過渡応答解析の実行
荷重および境界条件 は、入力デックのバルクデータエントリセクションで定義します。これらをサブケース情報エントリセクション内で参照する必要があり、これにはSUBCASEでSPCステートメントおよびDLOADステートメントを使用します。機械荷重と同様に、温度荷重(TEMP/TEMPD/TEMPADD)は、DLOADサブケース情報エントリに参照されるTLOAD1/TLOAD2バルクデータエントリーを介して線形過渡応答解析に適用することができます。
剰余ベクトルは、オプションAPPLODまたはUNITLODと共にサブケースステートメントRESVECを使うことによってアクティブにできます。これらは、デフォルトで計算されます。強制変位、速度または加速度が定義されている場合、剰余ベクトルは常に生成されます。剰余ベクトルは粘性減衰自由度に対しても計算されます。これらはデフォルトで生成され、RESVECオプションNODAMPでオフにできます。加えて、USETU6データがある場合、AMSESまたはAMLS固有値ソルバー使用時には剰余ベクトルが計算されます。USETU6剰余ベクトルは、Lanczos 固有値ソルバーが用いられている場合には計算されません。
剰余ベクトルが含まれる場合、拘束されていないモデルにデフォルトで慣性リリーフが適用されます。SUPORT1サブケース情報エントリは剛体の運動を抑制する境界条件を参照します。SUPORTバルクデータエントリまたはPARAM,INREL, -2を使用すると、サブケース参照を使用せずに拘束を定義することが可能です。
1つの過渡サブケースのみが定義できます。モーダル法が使用される場合は、初期条件は定義できません。モーダル法では、ノーマルモード解析を制御するためにMETHODステートメントが必要です。そのMETHODステートメントはEIGRLまたはEIGRAのどちらかを参照します。
解析のタイムステップおよび終了時間はTSTEP(TIME)サブケース参照で定義します。計算結果を保存するために、それより以前に保存された固有ベクトルを、EIGVRETRIEVEサブケースステートメントを使って読み込むことができます。
さまざまな減衰要素と材料減衰のほか、PARAM,Gを用いて一定の構造減衰 が適用されます。
モード減衰は、減衰テーブルTABDMP1のSDAMPING参照を用いて適用することができます。
出力
過渡応答解析の結果は、変位、速度、加速度、力、応力、およびひずみが計算されます。
応答は通常、時間依存です。STRESS、STRAIN、DISPLACEMENTなどの通常の出力エントリを使用して、対応する出力値を要求できます。NLLOAD I/Oオプションエントリは、各タイムステップについて非線形荷重の出力をリクエストするために使用できます。
DISP(MODAL)を使用すると、モーダルFRF解析 / 過渡応答で固有ベクトルのみを出力することができます。DISP(MODAL,NODAL)を使用すると、固有ベクトルとそれに対応するFRF解析 / 過渡応答の結果を両方出力することができます。
PARAM, ENFMOTN, RELを使用して、指定された強制運動に対する変位、速度、加速度の出力を生成できます。このような場合、応力や力などの後続で計算される出力も、指定された強制運動に対して生成されます。PARAM, ENFMOTN, TOTAL/ABSを使用して、指定された強制モーションを含む合計出力値を生成できます(デフォルトはTOTAL/ABS)。
フーリエ変換による線形過渡応答解析
フーリエ変換法を用いることで、周波数応答解析を過渡応答解析に使用することが可能です。周期的荷重下で構造モデルの過渡応答解析を実行するために、フーリエ変換を使用することもできます。
この方法の典型的な適用例として、でこぼこの多い路上での車輌の解析が挙げられます。
時間に依存する作用荷重は周波数領域に変換され、周波数依存のマトリックス計算が実行されます。その後、周波数応答結果は時間領域データに再度変換されます。
マトリックスの形で初期条件を有した次の運動方程式が解かれます:
マトリックス は剛性マトリックス、マトリックス は質量マトリックスを表わし、マトリックス は減衰要素を基に作成された減衰マトリックスです。初期条件は定義できません。
次の式を用い、荷重ベクトルを時間領域から周波数領域に変換します:
応答は次の式で与えられます:
ここで、 は単位荷重による周波数応答です。
周波数応答解析の後、次の式を使って時間依存の応答をリカバリーできます:
- システムが適度に減衰している必要があります。減衰が少な過ぎると、正しい結果が得られない場合があります。
- 荷重関数は一定の時間間隔でゼロとすることにより、減衰を可能とする必要があります。
- 周波数間隔は、次の式に従う必要があります:
直接法とモーダル法が装備されています。フーリエ変換を使用した線形過渡応答解析は、モーダル周波数応答サブケースも含んだモデルでは使用できません。OptiStructはこのような場合エラーを出します。
入力 / 出力
直接法
直接法による周波数応答解析が適用されます(周波数応答解析)。
荷重および境界条件 は、入力デックのバルクデータエントリセクションで定義します。これらをサブケース情報エントリセクション内で参照する必要があり、これにはSUBCASEでSPCおよびDLOADステートメントを使用します。
慣性リリーフは、直接法による周波数応答解析用には装備されていません。これを試みると、エラーが出されます。
周波数セットは、FREQUENCYステートメントを使用して参照する必要があります。初期条件は適用できません。解析のタイムステップおよび終了時間は、TSTEP(FOURIER)サブケース参照で定義します。
さまざまな減衰要素と材料減衰のほか、一定の構造減衰 を適用することもできます。これにはPARAM,Gを使用します。
モーダル法
モーダル法による周波数応答解析が適用されます(周波数応答解析)。
過渡応答の荷重条件および境界条件は、入力デックのバルクデータエントリセクションで定義します。これらをサブケース情報エントリセクション内で参照する必要があり、これにはSUBCASEでSPCおよびDLOADステートメントを使用します。
剰余ベクトルは、オプションAPPLODまたはUNITLODと共にサブケースステートメントRESVECを使うことによってアクティブにできます。これらは、デフォルトで計算されます。強制変位、速度または加速度が定義されている場合、剰余ベクトルは常に生成されます。
剰余ベクトルが含まれる場合、拘束されていないモデルにデフォルトで慣性リリーフが適用されます。SUPORT1サブケース情報エントリは剛体の運動を抑制する境界条件を参照します。これらの拘束は、SUPORTバルクデータエントリを使用すると、サブケース参照なしに定義することが可能です。または、PARAM,INREL, -2を使用すると自動化できます。
周波数セットは、FREQUENCYステートメントを使用して参照する必要があります。初期条件は定義できません。モーダル法では、ノーマルモード解析を制御するためにMETHODステートメントが必要です。解析のタイムステップおよび終了時間は、TSTEP(FOURIER)サブケース参照で定義します。計算結果を保存するために、それより以前に保存された固有ベクトルを、EIGVRETRIEVEサブケースステートメントを使って読み込むことができます。
さまざまな減衰要素と材料減衰のほか、一定の構造減衰 を適用することもできます。これにはPARAM,Gを使用します。
モード減衰は、減衰テーブルTABDMP1のSDAMPING参照を用いて適用することができます。減衰テーブルを適用する方法を定義するには、PARAM,KDAMPを使用します。
出力
フーリエ変換経由の線形過渡応答解析の結果は、変位、速度、および加速度が計算されます。時間ベースの結果はデフォルト(TIMEオプション)で出力され、サポートされている出力エントリでは、対応するI/Oオプションエントリ(DISPLACEMENT(FREQなど)のFREQオプションを使用して周波数ベースの結果を要求できます。