/FAIL/FRACTAL_DAMAGE

Blockフォーマットキーワード 事前に破断している要素に対し、初期損傷をあらかじめ付与する、簡略化されたフラクタルベースの破壊基準。

シェル(/PROP/TYPE1(SHELL)/PROP/TYPE9 (SH_ORTH)/PROP/TYPE10 (SH_COMP))および肉厚シェル(/PROP/TYPE20 (TSHELL)/PROP/TYPE21 (TSH_ORTH))に適合します。

フラクタル損傷パターンは、Stefan Kollingによって提唱された“ランダムウォーク”アプローチに基づいています。

フォーマット

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
/FAIL/FRACTAL_DAMAGE/mat_ID/unit_ID
Grsh4_1 Grsh3_1 Grsh4_2 Grsh3_2
Damage Probability Seed Nb_walk Iprint
オプションの行:
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
fail_ID

定義

フィールド 内容 SI単位の例
mat_ID 材料識別子

(整数、最大10桁)

unit_ID (オプション)単位の識別子。

(整数、最大10桁)

Grsh4_1 “ランダムウォーカー”の開始要素を定義する、4節点シェル要素のグループID。 2

(整数)

Grsh3_1 “ランダムウォーカー”の開始要素を定義する、3節点シェル要素のグループID。 2

(整数)

Grsh4_2 “ランダムウォーカー”のターゲット要素を定義する、4節点シェル要素のグループID。 3

(整数)

Grsh3_2 “ランダムウォーカー”のターゲット要素を定義する、3節点シェル要素のグループID。 3

(整数)

Damage 初期損傷値(0.0 ≤ Damage ≤ 1.0)。値が1.0の場合、時間ゼロで要素が削除されます。

デフォルト = 1.0(実数)

Probability 損傷凝集の確率。ターゲット要素付近に“ランダムウォーカー”が配置されると、現在の要素もここで定義された確率で損傷する可能性があります。

デフォルト = 1.0(実数)

Seed 乱数ジェネレーターの初期化。

デフォルト = 0.0(実数)

Nb_walk 解放される“ランダムウォーカー”の数。

(整数)

Iprint 各ウォーカーの経路(開始要素から、ウォーカーが消滅するまで、または次の要素が損傷するまで)の出力をアクティブにするフラグ。

デフォルト = 0(整数)

fail_ID (オプション)破壊基準識別子

(整数、最大10桁)

開始要素グループがなく、ターゲット要素グループ(パートの中央)に1要素のみ存在する例。
#RADIOSS STARTER
#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|
/FAIL/FRACTAL_DMG/1
#  grsh4_1   grsh3_1   grsh4_2   grsh3_2
         0         0        23         0
#             Damage         Probability      Seed   Nb_walk    Iprint
               0.552                 0.5         8     10000         0
#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|
#enddata
#---1----|----2----|----3----|----4----|----5----|----6----|----7----|----8----|----9----|---10----|
1.


コメント

  1. すべての開始およびターゲット要素グループは、破壊モデルと同じmat_IDで定義された/PARTに属している必要があります。通常、開始要素は(フロントガラスのように)パートのエッジ付近で選択され、ターゲット要素は中心付近で選択されますが、厳密なルールではありません。ターゲット要素はすでに最初に損傷を受けている要素で、その周囲に徐々に他の要素が凝集し、最終的な損傷パターンを作り出します。
  2. 開始要素グループID(Grsh4_1Grsh3_1)がどちらも定義されていない場合、連続する各“ランダムウォーカー”の開始点として、そのパートからランダムな要素が選択されます。
  3. ターゲット要素グループID(Grsh4_2Grsh3_2)がどちらも定義されていない場合、初期損傷ターゲットとして、そのパートからランダムな要素が1つ選択されます。
  4. “ランダムウォーカー”の数は、開始要素やターゲット要素の数よりはるかに多くする必要があります。
  5. 各“ウォーカー”は、開始要素グループからランダムに選ばれた要素からその経路を開始します。次の要素に到達するごとに方向を変え、領域の境界か、すでに損傷した要素の近辺に達するとその“ウォーク”を終了します。前者の場合、ウォーカーは他に影響を及ぼすことなく“消滅”します。後者の場合、現在の要素は、ある確率で、損傷グループに“凝集”します。
    2. 開始要素からターゲット要素までのランダムな経路の例


  6. 最終的なフラクタルのような損傷パターンは、“ウォーカー”の数と損傷の凝集確率によって異なります。この確率が小さいとコンパクトなパターンとなり、確率が大きいと広がりの大きいフラクタルになります。
    3.


  7. /FAIL/FRACTAL_DAMAGEは、Radioss Starterの要素損傷を初期化するだけです。Engineで外部負荷を受けた状態でさらなる損傷の進展をシミュレートすることはできません。この同じmat_IDに並行して、他の適合する破壊モデルを適用する必要があります。フラクタル損傷の初期化は、/FAIL/BIQUAD/FAIL/TAB2、および/FAIL/ALTERとのみ適合します。
    4. /FAIL/ALTERを使用したフロントガラスへの衝撃のシミュレーションで得られた結果の例


  8. Iprintフラグを使用すると、各ウォーカーの開始要素から終了までの完全な経路(領域の境界で終了している場合、新たな損傷要素を凝集している場合のいずれでも)を、標準出力ファイルに出力することができます。
1 Chen, Ching-Yao & Huang, Yu-Sheng & Miranda, José. (2014). Radial Hele-Shaw flow with suction: Fully nonlinear pattern formation
2 Physical review. E, Statistical, nonlinear, and soft matter physics.89.053006. 10.1103/PhysRevE.89.053006