トポロジー最適化では、各要素の材料密度は、空孔の要素を表わす0、または材料で満たされた要素を表わす1の値を取ります。残念ながら、大量の離散変数を持つモデルの最適化演算はできません。したがって、材料分布に関する問題は、連続変数によるものに置き換えて考える必要があります。
密度法では、各要素の材料密度は設計変数として直接使用され、0~1の間で連続的に変化します。0は空孔、1はソリッドを表わします。密度の中間値は、仮想的な材料を表します。材料の剛性は、密度に対して線形従属であると仮定されます。この材料の定式化は、材料についての一般的な認識と一致します。たとえば、アルミニウムより密度の高い鉄は、アルミニウムより剛性が高いです。この論理に従うと、中間密度を持つ仮想的な材料の概念は、エンジニアリングの直感を反映します。
ペナルティ
一般に、上記の両方の定式化で問題を最適化して得られる解では、中間的な密度を持つあいまいな領域が構造ドメインに大量に含まれます。このような解は、指定の材料のトポロジーを必要とする場合には意味を持たず、異なる材料を設計空間内で検討する際にも意味を持ちません。したがって、中間的な密度にはペナルティを科し、最終的な設計では各要素が0または1の密度で表わされるようにする技法を導入する必要があります。OptiStructは、トポロジー最適化の異なる設定において、異なるペナルティ技法を使用します。これらは、SIMP、RAMPまたはPolynomialです。
ここで、
は要素の剛性マトリックスにペナルティを科したマトリックス、
は要素の実際の剛性マトリックス、
は密度、
は常に1より大きいペナルティ係数です。SIMPは、設定の大半で使用されます。
RAMP:
ここで、
は要素の剛性マトリックスにペナルティを科したマトリックス、
は要素の実際の剛性マトリックス、
は常に1より大きいペナルティ係数です。RAMPは、OVERHANG制約を用いる際のデフォルトです。このデフォルトは、DTPLカードのPENSCHEフィールドで上書きが可能です。現時点では、RAMPはOVERHANGと併用の場合のみ使用することができます。
POLYNOMIAL:
ここで、
は要素の剛性マトリックスにペナルティを科したマトリックス、
は要素の実際の剛性マトリックス、
は常に1より大きいペナルティ係数です。alpha (
)の値は15.0です。
Polynomialペナルティは、質量が荷重に影響する際、たとえばノーマルモード、周波数応答、重力荷重(
GRAV)または回転荷重(
RFORCE)などではデフォルトでアクティブです。このペナルティスキームはオフにし、
DOPTPRM,
OLDPEN,
1.を用いてSIMPと置き換えることが可能です。その場合、荷重はペナルティを科した質量マトリックスで計算されます。ただし、各反復計算について
.outファイルに出力される質量応答値はペナルティを考慮せず、単に質量に密度を掛けます。これは、質量マトリックスが重力荷重計算についてペナルティを科せられ、通常反復計算が収束しない中間密度要素がモデル内に存在する場合、
.outファイルに出力される
かけられた荷重の和または
SPCFORCE値は、期待される(出力される質量応答からの)値とは異なります。収束後は、
SPCFORCEおよび
負荷された荷重の和は、出力される質量応答に基づいた負荷された荷重の計算に近づきます。これは、収束した解はより離散的で、中間密度要素の数がより小さくなるためです。
注: 剛性にのみ適用されるPolynomialペナルティ使用時は、質量ペナルティはありません。
離散
上記のとおり、解釈のためには、離散設計、すなわち、要素の大多数が0または1のいずれかである設計を達成することが望ましいです。解釈の難易度の問題に加え、最適化の最後にレポートされる構造のパフォーマンスは、多数の中間密度要素が存在する際は不正確となります。これは、そのペナルティを科した剛性が低いにかかわらず、中間密度要素は構造の挙動に大きな影響を与えるためです。構造の解釈後の再解析は、構造のパフォーマンスを検証するための唯一の信頼できる方法です。これは、異なるペナルティスキームから得られる構造の比較、たとえばDRAWで得られた構造とOVERHANGでの構造、すなわちSIMPで得られたトポロジーとRAMPで得られたトポロジーを比較する際にはよりいっそう重要です。異なるペナルティスキームは、中間密度要素が異なってペナルティを科せられると、レポートされるパフォーマンス間の差異がより増大することがあります。
離散性の推測
実践的には、0.0または1.0に等しい密度から成る設計を得ることは非常に困難です。実際、遷移ゾーンは、ソリッド部材と空孔の間に存在します。この遷移ゾーンは、ほとんどの場合、許容され得ます。しかしながら、主として中間密度要素を含んだ大きな領域を擁することは避けるべきです。これを定量化するために、OptiStructは、各反復計算後、.outファイルに離散インデックスをレポートします(バージョン2017.2.3以降)。これは、少なくとも密度が0.9の要素からの体積と、設計空間全体のそれとの比を計算することで、構造内の中間密度要素の量を示すものです。完全な離散モデルではこの値は1.0ですが、遷移ゾーンが存在する構造ではこのパラメータは0.5またはそれ以上となるはずです。値が最適化の終了時より小さい場合、トポロジーは注意深く解釈され、離散の改善への対策がとられるべきです。
.outファイルからの離散インデックス表の例と計算に使用される対応する式。
Density %
------------------------------
0.0-0.1 64.6
0.1-0.2 0.9
0.2-0.3 0.8
0.3-0.4 1.3
0.4-0.5 1.2
0.5-0.6 2.1
0.6-0.7 1.2
0.7-0.8 4.1
0.8-0.9 5.6
0.9-1.0 18.2
ここで、
-
- インデックス化された離散
-
- 要素の密度
-
- 要素の体積
離散性の改善
結果のトポロジーの離散性を改善するためには、数多くの方法があります。離散性の低い結果をもたらす可能性のある問題とその対処法は:
ラティス構造最適化
通常のトポロジー最適化で純粋にソリッドおよび空孔設計を達成することが理想的なのに対して、ラティス構造が、多孔質領域(中間密度領域)のラティス領域への実体化の自由を切り開きます。この種の最適化に使用されるペナルティは通常、設計内の多孔質領域を増やすことで減少されます。ペナルティとラティス構造の量は、LATPRM, POROSITYによってコントロールされます。詳細については、ラティス構造最適化をご参照ください。
SIMPのペナルティ
OptiStructでは、DISCRETEパラメータが(
)に該当します。DISCRETEは、DOPTPRMバルクデータエントリで定義できます。
は通常、2.0から4.0までの値をとります。例えば、
=0.3でペナルティを科していない式(
=1と等価)と比較した場合、
=2としたときの要素の剛性は、密度が1である要素の剛性の0.3倍から0.09倍に低下します。デフォルトのDISCRETEは、シェル要素が主体である構造の場合1.0、部材寸法が制御され製造性制約条件がないソリッド要素が主体である構造の場合は2.0です(どの要素が主体であるかは、要素の数の割合で定義されます)。追加のパラメータDISCRT1Dも、DOPTPRMバルクデータエントリを使用して定義できます。DISCRT1Dは、1次元要素に対して、ペナルティを2次元要素または3次元要素とは異なるペナルティとして使用できます。
ソリッド要素が主体ではないモデルについて、
部材寸法制御を使用すると、ペナルティは2から始まり、2度目、および3度目の反復フェーズでは3に増加します。これは、さらに離散的な解を得るためです。
型抜き方向制約条件、
押し出し制約条件、
パターン繰り返し、および
パターングルーピングなど、その他の製造性制約条件については、ペナルティは2から始まり、2度目の反復フェーズでは3、3度目の反復フェーズでは4に増加します。異なるペナルティ係数を使用する新しいフェーズに入った設計プロセスでは、中間密度の要素の存在により、解析結果が大幅に変わることが明らかです。
表 1. トポロジー最適化のデフォルトのDISCRETEおよびペナルティ値
モデル |
DOPTPRM, DISCRETE |
ペナルティ |
シェル要素主体の構造 |
1.0 |
2.0 |
シェル要素主体の構造 + 部材寸法制御のみ |
1.0 |
Phase 1 – 2.0 Phase 2 – 3.0 Phase 3 – 3.0 |
シェル要素主体の構造 + その他の製造性制約条件 |
1.0 |
Phase 1 – 2.0 Phase 2 – 3.0 Phase 3 – 4.0 |
ソリッド要素主体の構造 |
1.0 |
2.0 |
ソリッド要素主体の構造 + 部材寸法制御のみ |
2.0 |
Phase 1 – 3.0 Phase 2 – 4.0 Phase 3 – 4.0 |
ソリッド要素主体の構造 + その他の製造性制約条件 |
1.0 |
Phase 1 – 2.0 Phase 2 – 3.0 Phase 3 – 4.0 |
OptiStructでは、ソリッド要素、シェル要素、および1次元要素(ROD、BAR/BEAM、BUSH、およびWELD要素を含む)の3つのタイプの有限要素をトポロジー設計要素として定義できます。